意味のあるプログラミング教育の実現は無理
プログラミング教育は形だけ、またはまったく行われない学校がほとんどになるでしょう。
この理由を述べる前に、まずプログラミング教育のねらいを明らかにししておきます。 文部科学省から発行されている小学校プログラミング教育の手引(第二版)の第2章冒頭に下記の様に記載されています。
第2章小学校プログラミング教育で育む力
(1)プログラミング教育のねらい
小学校におけるプログラミング教育のねらいは、「小学校学習指導要領解説総則編」においても述べていますが、非常に大まかに言えば、①「プログラミング的思考」を育むこと、②プログラムの働きやよさ、情報社会がコンピュータ等の情報技術によって支えられていることなどに気付くことができるようにするとともに、コンピュータ等を上手に活用して身近な問題を解決したり、よりよい社会を築いたりしようとする態度を育むこと、③各教科等の内容を指導する中で実施する場合には、各教科等での学びをより確実なものとすることの三つと言うことができます。プログラミングに取り組むことを通じて、児童がおのずとプログラミング言語を覚えたり、プログラミングの技能を習得したりするといったことは考えられますが、それ自体をねらいとしているのではないということを、まずは押さえておいてください。
(以下略)
小学校教員はプログラミング経験がほぼない
ほとんどの小学校教員がプログラミングの経験がない上に、経験があっても深く理解しているプロではないので人に教えることは難しいと思います。何でもそうですが自分ができるからといって必ずしも教えることもできるというわけではありませんよね。プログラミングを教えることができないのに、プログラミングをする上で根幹となっている考え方、すなわちプログラミング的思考を教えることなどまず無理でしょう。そもそも、文部科学省が言うプログラミング的思考とは何なのかというところも理解できない先生方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、基本的には算数や理科の授業でプログラミングを用いて教えることとなり、その事例も文部科学省から発表されてはいますが種類が非常に少ないです。プログラミングを通してその教科の理解を深める狙いがあるとのことですが、そもそも教科の理解ができていない子供にとってはプログラミング等不可能です。子供によって教科の理解度、プログラミングに適応するスピードがかなり異なるはずなので、短い時間の中で実のある授業をすることは難しいでしょう。
考え方を教わってもすぐに身につくものではない
プログラミング的思考を育むとなりますが、1度や2度プログラミングをしただけでその考え方が身に着くと思いますか?
ポジティブ思考がいいと人に言われたからと言って、もともとネガティブ思考な人がそう簡単に変われますか?
私自身、良い考え方を知って自分も身に着けたいと思ったことはたくさんありました。ですがなかなか身につくものではありませんでした。考え方というものは、それにもとづいた具体的行動を繰り返すことでしか身につかないと感じています。大人と子供では新しい考え方へ順応するスピードが子供の方が圧倒的に速いと思いますが、基本的な構造は一緒でしょう。
英語と道徳の教科化だけで大変
都道府県ごとに準備状況は異なりますが、準備が進んでいるところではプログラミング教育の研修が済んでいるから大丈夫と思われるかもしれません。
ですが、仮にプログラミングを教えることのできる教員がいたとして数回の授業でプログラミング的思考を育むことができると思いますか?
日常的または集中的にプログラミングを実践していればプログラミング的思考を育むこともできると思いますが、そんな時間が設けられますか?
現状でも小学校では教えなければならない分量に対して授業に充てられる時間が不足していると言われています。そんな中で、新たにそんな時間が設けられるはずがありません。さらに言えば、2020年度から英語と道徳が教科化されます。学校、教員はこの対応だけで手一杯ではないでしょうか?教科化されるということは国語や算数などと同じ扱いとなり、英語と道徳についてもそれぞれ決められた時間の授業をして評価もするということです。私が以前小学校にプログラミングの体験授業に伺って先生方とお話した際も、英語の対応だけでも大変でプログラミング教育については考えることもできないとおっしゃっていました。
とてもプログラミング教育ができる状況では無いと思いませんか?
プログラミング教育など現状無理だし不要
小学校では英語と道徳で手一杯でしょう。道徳についてはマスコミでもなにかと話題になりましたし扱いが難しい問題です。まずはこちらを何とか実のあるものにすることが大切だと思います。
私個人としてはプログラミング教育を小学校からやる必要性自体疑問です。情報活用の能力を身に着けるという意味では、普通の教科の授業でインターネットを活用して調べる、考える、発表するといったことを日常的に行う方が必要だと思います。色々な情報があふれる世の中で、正しい情報、有益な情報をいかに見極めるかの方が重要でしょう。
プログラミングは体験授業を4年生~6年生の間に数回する程度で十分だと思います。それでプログラミングの楽しさを体験して興味を持つ人が増えたらいいなと思います。